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- 第13回 応用物理学科/物理学及応用物理学専攻 青木隆朗 准教授
これまでの経験をすべて注ぎ込む研究の立ち上げへ
2011年に早稲田大学に着任しましたが、実は、今なお研究環境は立ち上げ途中です。その時々で興味を持ってチャレンジしてきた研究テーマを、「ナノフォトニクスデバイスを用いた量子光学」として集約し、新たな第一歩として取り組もうとしています。ですから、当面の目標は早く研究室を立ち上げること、中期的には新しい実験系で量子光学における未知の現象を解明することです。理学と工学、両方やりたいと思って学科を選んだ気持ちを持ち続けているからこそ、工学分野であるデバイス技術を理学分野での観測技術として応用する、という考え方を持つことができているのだと思います。量子光を自在に扱う技術が発展すると、たとえば情報処理・情報通信技術が飛躍的に向上するでしょう。私が思いもしない使い道が、また別の分野の研究者・技術者によって、もたらされるかもしれません。
「美しい」学問を通して論理性を磨いてほしい
研究というものがどのようなものであるのか、卒業研究を始める時点では学生さんは知らないと思います。私もそうでした。実験科目や演習科目を履修してはいますが、それらは基本的に答えが用意されています。研究には、答えがありませんし、あるかも分からない状態で進めなければいけません。進めるための原動力が「考える」ということです。どのような実験をすれば知りたいことが分かるか、という計画段階から、得られた実験データが何を示しているのかに至るまで、とことん考え抜くしかありません。特に物理学は自然現象を論理的に説明する「美しい」学問ですから、思考もまた論理的である必要があります。この「論理的に考える」ということこそ、ぜひ学生のみなさんに身に付けて欲しいと考えている力であり、社会に出て仕事をする上でも必ず役に立ちます。論理的な説明やプレゼンテーションには、相手を説得し、感動させる力があります。
さいごに。私が学生のころ、「趣味は実験室で右往左往すること」とおっしゃった先生がいました。当時は「変なことを言う先生がいるな」とだけ思ったのですが、今現在の自分も、試行錯誤しながら装置を組んだり実験したり、考えたり議論したりしている時間を、確かに楽しいな、と思っていることに気付きました。この記事を読んだ学生さんがまた「変な先生がいるな」と思い、その中のひとりでも何年後かに「変な先生の仲間入り」をしてくれる日がきたらうれしいですね。
聞き手・構成
武末出美(早稲田総研イニシアティブ)