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- 第11回 応用化学科/応用化学専攻 関根 泰 教授
触媒表面で酸素が出入りする場を創ることで、反応を促進
電場をかけるということ以外にも触媒自体を高性能化する研究も進めています。従来型の触媒というのは表面に物質が吸着し、反応後に触媒から離れるというかたちが主ですが、私たちは触媒表面で酸素が出入りすることを生かした系について深い検討を進めています。
酸素が表面で出入りすることが出来るようにしてあげることで、従来のくっついて離れるだけの反応と比べると、圧倒的に性能を高くすることができます。触媒の表面で酸素が待ち構えていて、表面にやってきた物質にアタックするように反応させる形態のほうが、より高い性能を出すことが出来ます。酸素が動きやすい場所を、無機化学の知見を総動員して作り出すことが重要です。酸素の動きを良くするために、酸化物の構造をゆがませるような合成法を用います。このように酸化物の構造を変えたり、触媒に電場をかけたりという方法で、エネルギーの分野、あるいは環境の分野において、低温で高効率に反応を進ませるということが、私たちの研究の柱です。
どうあるべきか、を追求
私はスティーブ・ジョブズをすごく尊敬しているのですが、彼のインターフェースの考え方にものすごく共鳴しました。「マウスはボタン一個がいい、フロッピーディスクはドライブ一個がいい、2個あると人間は間違ってしまう」と。この考え方は、ジョブズの理念として貫かれ、そこから、あのシンプルなインターフェースを考案し、今日のAppleがあり、世界中を席巻しています。ジョブズという人はイノベーターとして知られていますが、その実、やっていることはシンプルにこだわり、「どうあるべきか」ということを徹底的に考えた人だと思います。
翻って、科学の分野で未来のエネルギーとはどうあるべきか、ということを考えていった結果が、エネルギーを効率よく使うための化学と言う方向性です。現在主流の大工場を使った化学のように、大規模な施設で高温高圧で反応させて、分離・蒸留を行うという複雑なサイクルではなく、できるだけシンプルに無駄を省いた形で実現したいと思っています。エネルギーは暮らしのインターフェースですから、シンプルで無駄のないものにしていきたい、それも誰かがやっていることを私がやっても仕方ないですから、誰もやったことのない方法で実現したいですね。
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