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自然には敵わないと感じられるのも、研究の面白さ

「人工コラーゲンもどき」は三重らせん構造を持ったペプチド、すなわちコラーゲン様ペプチドを基礎としています。このコラーゲン様ペプチドのまま、他の用途への利用を目指すことも私たちの研究のひとつです。

コラーゲン様ペプチドは、通常のペプチドに比べて体内の酵素によって分解されにくいため、かなり安定して存在することができます。しかもこのコラーゲン様ペプチドは、アミノ酸の組成を変えたり、三重らせんの表面のアミノ酸を選ぶことで、ある程度、自由にデザインすることができます。そうすることで、たとえば医薬品などが作れないかという研究をしています。まだ医薬品はできていませんが、通常、細胞膜を透過しないペプチドが、私たちがデザインしたコラーゲン様ペプチドで可能になりました。

小出隆規 教授

他にもいくつかの成果は得られていますが、まだまだ自然のコラーゲンには敵いません。しかし、自然がすごいということを実感できることも、研究の面白さのひとつだと思います。

天然のコラーゲンと人口コラーゲンもどき
細胞が培養容器の底面に張り付いて伸展している様子。
「人工コラーゲンもどき」も天然のコラーゲンと同様の細胞接着効果が得られたことがわかる。

どこに行っても通用する実力を

研究者の多くは、「私はこういうことができる」と、ある特定の技術の専門家として名を立てる傾向にありますが、私は基礎から応用まで、興味のあることに関しては、すべて自分でやりたいと思うタイプです。少し傲慢に聞こえるかもしれませんが、「他の人ができることのほとんどは、自分にもできる」と考えています。ですから技術的な専門分野を限定せずに、いろいろなことを自分でやっています。そもそも自分の専門分野についても、生物学、化学、薬学、医学など、さまざまな分野にまたがっているため、一体どれが私の専門であるかがわからなくなってしまいました。

研究中の様子
研究室の様子

これまで約20年の研究生活で6回も職場が変わっていますが、何とか職にありつけているのは、研究者としてやるべきことをやってきたからチャンスを捕まえられたのだと思います。

近年、学生たちは「シューカツ」なる言葉に煽られ、本分である研究活動がおろそかになりがちです。しかし、面接の出来不出来に一喜一憂するのではなく、しっかりと実力を身につけて、どこにいっても通用する人材になってほしいと思っています。

研究だけにとどまらず、自分の目標に向かって、やるべきことをやる、そんな姿勢に共感できるという人は、ぜひとも、本学、特に私の研究室の門を叩いてほしいですね。

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