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新しい機能性高分子の創出

学位を頂き、しばらく高分子錯体やその溶液化学に関する研究を続けた後、東京理科大学に移り界面の性質に着目した電極触媒、センサー、分子集合体の関わる電子移動の化学に関するテーマを扱っていました。界面の性質は全体の性質を決める上で重要ですが、高分子がもっとバルク全体でダイナミックに刺激応答するようなケースがないものかと考えていました。2007年春から、早稲田大学に戻ることになったのを機に、電圧をかけたときの高分子の反応が電極との界面だけでなく全体に行きわたるような分子設計と、そのような高分子の電気物性に関する研究に取り組み始めました。この例として、蓄電物質や光電変換材料に関する現在の研究があります。

小柳津研一 教授

実験を行う中で「いつもと何かが違う」と感じ、そしてもう一度考えなおすことを大切にしています。自然相手に実験しているのは私たち=人間なので、実験データに対してどう感じるか(直感)が最初の一歩だと考えています。実験データのデジタル処理は便利ですが、データに物差しを当ててプロットの曲線にこだわったり、違う角度から計算してみて初めて分かることもあると思います。海外でお世話になった先生たちが、実際に実験してデータを扱いパソコンなどで数値解析している私よりもずっと速く的確に、暗算や概算を頼りに解析していたことが印象に残っています。これは実験データを多角度から俯瞰するために良い方法だと思うので、時には「アナログ」に実験結果と向き合うことを心がけるようにしています。そして、何か面白そうな「兆し」があったら例えどんなに小さなことでも見逃さずに議論する雰囲気を作っていきたいと思っています。

バルデビア(チリ)にて
図2 バルデビア(チリ)にて;チリは電池の原料になるリチウム生産大国

今後は、エネルギーに関連した新しい機能性高分子を創っていきたいと考えています。導電性、磁気物性、光物性と広い分野にわたっている機能性高分子の領域で、目的に合致した性質、たとえばエネルギー変換システムを構成する高分子やそのデバイスを追求していきたいと思います。大学での研究はアイデア・基礎段階においては産業・工業レベルとは精度や量において大きな隔たりがありますが、その隔たりを認識した上で応用研究に取り組むことが重要であると考えています。もちろん、応用を考える中で、これまで知られていない全く新しい基礎物性を引き出せるような高分子の「応用化学」を展開していくことが目標です。

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