生命医科学科 4年
医学・生命科学にさまざまな角度からアプローチする
生命医科学科はどのような学科ですか。
生命医科学科では、理工学をベースとして、医学・生命科学など幅広い領域を学ぶことができます。また、学部4年生から配属される研究室では、医療や健康への貢献を目指して理工学と医学を融合させた新しい研究が日々行われています。
たとえば、絆創膏を何倍も薄くしたようなナノシートを医療に活用する研究が行われていますが、これは化学から医療へのアプローチです。アルツハイマー病の原因と考えられているアミロイドβに関する研究では、疾患モデルを用いる生物学的なアプローチや、アミロイドβの立体構造を解析する物理化学的な手法を用いた研究が行われています。
アプローチに用いる学問は物理、化学、生物に限りません。コンピュータを用いた情報工学など、研究室の強みや得意分野に合わせて、様々なアプローチで研究が進められています。
所属している大島研究室での研究内容について教えてください。
大島研究室では、脳の神経細胞の機能や神経回路を制御する遺伝子に着目して研究しています。脳や神経回路が正しく作られる過程と、アルツハイマー病などの病気によって壊れてしまう過程でどのように遺伝子が働くか、などの研究です。こうした研究を、主にマウスや小型魚類であるゼブラフィッシュを用いた実験を通じて進めています。私はゼブラフィッシュを使って、神経回路が正しく形成されるメカニズムを調べているところです。
具体的にはどのようなことをしていますか。
脳の神経回路は、神経細胞の樹状突起と軸索が正しくシナプスを形成することで作られますが、マウスの研究から、Btbd3遺伝子が樹状突起の発達やシナプスの形成に関係しており、神経回路が正常に作られるのに重要な働きをしていると考えられています。しかし、ゼブラフィッシュではその機能は明らかになっていません。
遺伝子の機能を調べるためには、その遺伝子を持たない個体を作り、異常が見られるかどうかを解析する方法があります。そこで、今は遺伝子編集技術を応用し、Btbd3遺伝子を持たないゼブラフィッシュを作っているところです。今後、Btbd3が樹状突起の正常な発達に関係しているのか、関係するならどのような機構で作用するのかを研究する予定です。
TWInsの最新設備と「オープンラボ」
研究室は西早稲田キャンパスとは別の場所にあるそうですね。
東京女子医科大学との連携先端生命医科学研究教育施設、通称「TWIns(ツインズ)」にあります。TWInsは、人工心臓の開発など、医学分野と理工学分野をまたがる分野の研究を深めるために作られました。その功績が認められ、2017年には「第1回日本医療研究開発大賞 経済産業大臣賞」が授与されたそうです。
生命医科学科では、すべての研究室が壁のないひとつの大きな部屋に入っている「オープンラボ」形式を採用しました。ほかの研究室との交流が活発に行われ、豊かな発想の源泉となっています。最新の設備を備えた恵まれた環境で、最先端の研究を行えるのは幸せです。
学外活動ではどのようなことをしていましたか?
3年生までは、いけばなサークルと弓道サークルに入っていて、それぞれ週1回の練習に参加していました。いけばなサークルでは幹事長を務め、昨年引退しましたが、今も活動には参加しています。
サークルには留学生がとても多かったので、交流する機会が頻繁にありましたが、彼女たちの向学心や意欲にはとても刺激を受けました。留学生の多さも早稲田の特徴ですね。大島研究室にも複数の留学生がいます。
また、留学生もそうですが、早稲田には文系・理系問わずいろいろな人がいて、交流しやすい環境が整っています。様々な経験や価値観、考え方に触れる機会が多いので、人間的にも成長できますよ!
最後に、早稲田を目指す皆さんにメッセージを。
進路を選択する際、現時点で好きなこと、興味があることを大切にしてほしいです。私は高校の頃から生物が好きで、大学でもっと詳しく学び、将来も生物の知識を使えるような分野に進みたいと思っていて、今もその道を進んでいます。はっきりとした目標はまだないかもしれませんが、漠然とでもいいので、「こんなことをやってみたい」という自分のなかの気持ちに耳を傾けてみてください。きっとその気持ちが、前に進む原動力になるはずです。周りに流されず、自分で考えて行動に移すことが大切だと思います。