応用化学科 学部4年
何が起こるかわからないからこそ、実験は楽しい!
黒田・下嶋・和田研究室全体の研究テーマから教えてください。
割れたガラスが元に戻るような自己修復材料、省エネルギーに貢献する吸着・分離材料などの開発に向けて、色々な組成や構造の無機物質を応用することを目指している研究室です。具体的には、スポンジのように孔がたくさんある多孔体を合成したり、ナノ粒子を合成し、それを並べたりするなどして、組成・構造を制御しようとしています。また、物質の組成を変える研究や、層状物質の間に他の種類の物質を挟んで反応させる研究なども行っています。
村本さんはどのような研究に取り組んでいるのでしょうか。
私の研究はケイ素を使った透明断熱材の開発です。今のところ、透明断熱材は少なく、建築分野で実用化されている高性能な断熱素材はほとんどありません。研究室では長くケイ素を扱ってきたため、その知見を活かして、透明断熱材を作ろうと着手したところですが、断熱材は研究室ではじめて扱うテーマなので、試行錯誤中です。
試行錯誤をもう少し説明してもらえますか?
まずは先生方や先輩と相談し、研究の取っ掛かりとなる分子・化合物を作り、膜にするところから始めることになりました。内心、3日程度でできるだろうと思っていたのですが、そもそも実験の原料となる分子の合成がなかなかできず、そこまでに1週間が経過。さらに膜にしようとしても一様になりません。大変なのは、このような現象がなぜ起こるのかがわからないことです。たまたま作れたというのでは、大学の研究になりません。既存の論文を読み、考え、原因を推測した上で、次の作業を決定しなければならないところでも苦心しています。
研究の大変さを乗り越えるコツはありますか。
卒業研究を始めたばかりで、本当のところはまだわかりません。学部3年までは、課題も実験もなるべく効率良くこなそうとしていたのですが、卒業研究では、答えがないのはもちろん、参考にすべき論文から探さなければなりません。初めはそこに戸惑い、ストレスを感じていました。そんな私を見て、先輩がご自身の経験を通してアドバイスをくれたのです。「研究って、自分の思い通りにはならないものなの。面倒臭いことをやるのも研究。直進できそうなところも、迂回しないといけないことがあるの」
このアドバイスを頂いてから、意識が変わりました。
その後は、研究室での実験はすごく楽しいです。世界中の誰もまだ見つけていない、そしてまだ結果がわからないことをやっているので、たとえ想定していた結果とは違っても興味をそそられます。「いったいどうしてこんなことが起こるのか」と驚かされるからです。だから苦にならないですね。
早稲田での大学生活は、勉強もほかのこともたくさん学べる
応用化学科の売りは?
もともとそれほど化学が得意だったわけではないのですが、すべてのものは原子・分子からできていて、化学が応用されていることに魅力を感じ、将来、確実に人の役に立てる学問だと思って応用化学科に来ました。実際、無機、有機、高分子材料を作る研究室や、有用な菌や酵素を作る研究室、いろいろな装置を設計する研究室、塵一つないクリーンルームを使って電池を開発する研究室などがあります。幅広い研究ができますし、そのおかげか、就職も強いのでおすすめです。
それから、学生数がそれほど多くなく、学科全体で受ける授業や実験が多いこともあって、学科内で友達ができます。化学系で似た者同士が集まるのか、皆、とても仲が良いです。無理にサークルに入る必要もありません。
最後に、受験生にメッセージをお願いします。
大学に入ったら、高校とはまったく違う生活になります。いろいろな経験ができるので、自分の視野が広がるという意味でも面白いです。特に早稲田にはいろいろな面で優秀な人が多く、刺激を受けられます。学科内にはテニスで全国レベルだった友達がいますし、所属していた書道サークルにはものすごい芸術センスの良い先輩がいました。
それと、大学は皆さんが思っているよりも、専門分野を始め様々なことを勉強できる場所です。もちろん、勉強しようという意思があればですけれども。早稲田はonとoffの切り替えがうまい人が多く、勉強と趣味や遊び、どちらかだけではなく、両方を全力で取り組む人ばかりです。ですから、大学はいろいろな意味で学びが多く、人生の糧になります。ぜひ、早稲田に入って、たくさん学んで様々な経験をしてください!