• トップ
  • EVENT & NEWS 一覧
  • 生命医科学科の武田研究室が、三次元培養系における細胞の生存率を大幅に向上させる培養技術を開発しました。
写真 2011.06.13

生命医科学科の武田研究室が、三次元培養系における細胞の生存率を大幅に向上させる培養技術を開発しました。

生命医科学科 武田直也准教授







生命医科学科 武田研究室は、三次元培養系における細胞の生存率を大幅に向上させる培養技術を開発しました。

細胞をゲルに包埋して培養する手法は三次元培養と呼ばれ、生体により近い状況で細胞を培養できるとして、細胞工学研究や再生医療研究などで精力的に用いられています。しかし、ゲルを培養液に浸すだけのこれまでの培養方法ではゲル内部に含まれる培養液を十分に交換することができず、培養細胞への栄養分や酸素の供給不足ならびに細胞が排出した老廃物の蓄積などで、長期的に細胞を培養することは難しいとされてきました。

武田研究室では、シリコーンゴムとガラスとを組み合わせた小型の流路(2x2x20 mm)を持つ培養容器にゲルを充填し、マイクロシリンジポンプで微少量の培養液を連続的に送液してゲルの全体の培養液が定常的に交換できる培養技術を開発しました。シリコーンゴムは気体の透過性に優れるため酸素の供給にも有効です。また、培養容器は小型なため、市販の37℃恒温培養機器の庫内へ容易に設置できます。

この培養技術を用いて、流量0.01 L/minで培養液を流し入れながらコラーゲンのゲル中で神経モデル細胞(PC12細胞)を1週間培養したところ、培養液を流さない場合では12%だった細胞の生存率が71%と約6倍に増大し、本培養技術の著しい効果が確かめられました。培養液の流れが細胞に与える影響も調べたところ、通常では四方に不規則に突起を伸ばすPC12細胞が、流れを与えたゲル内部では突起が伸び出す細胞体の位置や突起の先端が伸長する向きが培養液の流れる方向に集中することが見いだされました。これより、多数の神経細胞をまとめて神経突起が一方向に揃った状態に培養し、生体同様の神経束の作製や移植医療への応用へと展開することも期待されます

本成果は、第20回インテリジェント材料/システムシンポジウムで発表され、1月18日付け日経産業新聞にて報道されました。







図1. 開発した三次元細胞培養容器。チューブを通じて培養液を流しながら培養する。







図2. 細胞培養システム全体の模式図。









図3. 三次元細胞培養容器における培養液の送液あり(+)となし(−)での細胞生存率の比較。棒グラフ上の数値はn = 3の平均値、エラーバーは標準偏差を示す。